「怠惰な大人になるな」と土まみれのサッカーボールから諭された昼さがり。

天気が良かったので近くの川沿いを散歩することにした。

冬の冷たさも抑えられ、前髪を程よくなでてくれる風に身を任せながら道を歩いた。時刻は昼過ぎ。陽の光が川に反射して、きらきらと輝いている。ああ、春が近づいているのだなあ。いつか盛り上がったお花見の記憶に浸りうっとりする。くぅ、酒が飲みたい。

ゆらゆらと泳ぐ鯉を眺めながら、どこまで行こうか考える。別に大して家から離れているわけではないし、特別予定もないからそこまで気にしてはいないけど。

なんて頭の中で喋っていると、気が付けば小さな公園に着いていた。公園と言っても鉄棒やブランコなどの遊具があるわけではない。こじんまりした木のベンチが4つ。ぼこぼこした地面からところどころ細い木が生えている。非常に殺風景な空間だ。

どういうわけか、そこが妙に落ち着いてしまったので、ちょっとここで休憩していこうと思った。人っ子一人おらず風が木々を揺らす音が聞こえるばかりで、なんだか少しさみしい。ダウンのポケットから煙草を取り出し火をつける。いつも以上にゆっくり吸いゆっくり吐き出していると、端の無造作な草むらに小さなサッカーボールを見つけた。網目が確認できないほど土まみれの様子をみると、長らくここに放置されていたようだ。軽く足で踏んでみると、意外にもしっかり空気が入っていて驚いた。

ボールを右足の甲に滑らせ、軽くリフティングを始めてみる。ぽーん、ぽーんと小気味よい音を立ててボールは空が舞う。が、10回もいかずに地面へ落ちてしまった。

サッカー部だったので、多少は遊べるだろうとふんでいたのだが、びっくりするくらい技術は落ちていた。悔しくなってもう一度、もう一度と幾度か繰り返しているうちに膝と靴は土まみれに。

私の息は完全に上がっていた。たった15分間リフティングをしていただけなのに。

 

なるほど、これが日々の代償なのかと額の汗をぬぐいながら思った。肝臓を捧げるかの如く酒を浴び、肺は煙で満たし、終電ダッシュで申し訳程度の体力づくり。先月28歳を迎えたのだが、身体能力が年々落ちてきているのを感じている。歳を重ねるにつれ様々な酒の場を覚え、肉体を酷使した労働は自分より若い者たちに振る。 

よくないな、楽なことばかり覚えてきている。要領もよくなって、自分の力量も理解し始めているから力の抜き方が分かってきてしまっている。そのくせ、後輩や生徒たちには「気合だ根性だガッツだファイトだ」などとがむしゃらな精神論を述べているのだからたちが悪い。ごめんな。

もちろん、「もっと頑張れよ」という言葉を人生の先輩方からよーく頂く。しかし完全説教モードになる前にうまく逃げる隠れる躱す、まるで伊賀忍者のように。

いやあ、最近駄目だなあ・・・。サッカーボールを見ながらつぶやく。丸い土の塊のような外見になるほどがむしゃらにボールを蹴らなきゃいけないなあと。大人びた行動は、時にただの怠け癖になることもある。自分を見直さなければ。コロコロと転がっていくサッカーボールに向かってひとり頷いた。

 

…もう少しだけ蹴っていこうかな。

木の間を縫うようにドリブル練習を開始する。

身体のキレを取り戻すには時間がかかりそうだ。

 

気がつけば、風が少し強く冷たくなっていた。


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38.5℃の熱を出した状態で美少女に告白したら、気味悪がられてサクッとフラれた件について。

前回、【告白して失敗する奴にありがちな痛い思考を自省の念とともに解説してみた】という記事を書いた。自分のことを棚に上げて「これだからお前らはダメなんだ」と批判の快楽に溺れてしまったことを心より反省したい。

ごめん。

というわけで今回の記事は、【今週のお題「告白します」】第二幕~38.5°Cの熱を出した状態で美少女に告白したら気味悪がられてサクッとフラれた~という私自身の失敗談にしてみた。

自分のタイミングを重視してナルシズムに酔った結果こうなった。これから告白を考えている男子諸君、ぜひ同じ轍を踏まないでほしい。

 

 

あれは私が18歳の時のこと。大学に入学したばかりの私は人生初の一人暮らしを謳歌していた。髪を染めパーマをかけ、俗にいう大学デビューを果たした。京都という新しい土地、愉快な新しい友人たち、何もかもがきらめいて世界がまるごと自分を受け入れてくれている。まさに人生の絶頂期とはこのことだと浮かれていた。

そして自分には大きな目標があった。言わずもがな、恋人を作ることである。華々しいキャンパスライフに必要不可欠なものであると言っても過言ではない。少なくともその時は本気でそう思っていた。祇園祭宵山までに彼女が出来なければ来年まで彼女ができないという謎のジンクスも相まって、私はせっせと様々なサークルの新歓に足を運び恋の芽吹きを探しまくっていた。

5月初旬。ついに出会いはやってきた。インドアスポーツサークルの新歓バーベキューに華は咲いていた。艶やかな黒髪、アーモンド形の妖艶な目、すっきりとした鼻筋、ロングスカートの裾がさわやかになびく美少女だった。名前は仮にMとしよう。私は一瞬にしてMに心を奪われた。この子が彼女だったら薔薇色の日々になるだろうなあ。こんなに可愛いのだから、すぐに彼氏ができてしまうに違いない。とにかく、善は急げ、だ。

連絡先を交換した後、私はすぐご飯の約束を取り付けた。まだ入学してから日も浅い。数多のライバルに先駆けしてやったぜと意気揚々の帰り道、拳を天に突き上げた。

それから数回のデートを繰り返し、なんということだろうか互いの家にも行った。「異性の家に上がり込む」これは大きな意味を表しているはずなのだが我々互いに18歳の青少年少女。大人の世界を想起させる出来事は特別起こらなかった。ギターを弾いてB'zのALONEを歌ったりと割と純情な青年だったのが我ながら未だに信じられない。

 

Mと知り合ってから1ヶ月半経った頃、ついに大きな決心をする。夜中、覚えたての酒を体に流し込みながら、乱雑に置かれた卓上カレンダーを見て大きくうなずく。

 

「7月7日の七夕、Mに告白しよう。」

 

七夕と言えば織姫と彦星が逢瀬を果たすロマンティックな日。この二人のラブパワーにあやかってみりゃ告白も成功するんじゃねえか。ああスピリチュアル万歳。友人たちに電話をかけて今までの経緯を説明したらみんな揃って「大丈夫やろ」と言ってくれたので自信も湧いてきた。よっしゃいける、いける。付き合った後のムフフな光景を頭に描きながら酔いどれ妄想人は眠りについた。

今から思えばこの時に気づいておくべきだった。自分の都合でタイミングを決めてしまうのがどれだけ危険なことかまだ私には分かっていなかった…。

 

七夕当日。ちょっと相談したいことがあるから今夜一瞬会えない?と午前中のうちにメールを送った。口実作るのヘタクソか、というツッコミはあるかもしれないが彼女に会うために頑張ったんだ、多めに見てくれ18歳を。

しかし、ひとつ大きな問題が発生していた。朝から体の節々に猛烈な痛みを感じていたのである。時間を追うごとに動悸も激しくなり、頭も回らなくなってくる。引き出しの奥から体温計を取り出し測ってみると38.5と表示された。ダメだ、これは完全にダメなやつだ。咳も出てきた、つばを飲み込むと激痛が走る。

こんなコンディションで告白などしていいわけがない。普通ならばそう考えるだろう。だが、私は最後まで信じていたのである。希望の七夕マジックを。

約束の時間が迫り、Mの家までふらふらと自転車を漕ぐ。もはや視界も危うい。このまま死ぬのではないかと悲劇の王子を気取りながら彼女のアパートのエレベーターに乗る。やっとの思いで部屋の前までたどり着きインターホンを押した。

「はーい」という快活な声がした数秒後、笑顔のMがドアを開けて出てきた。対象的に、汗はだらだら息は絶え絶え今にも倒れこみそうな自分の身体。残された力を振り絞り、用意していた口実をまずは彼女に告げようとした。

 

「好きです。付き合ってくだしゃい。」

 

頭が働かず口だけが勝手に動いているのを遠い意識の中で感じていた。え・・・と困惑した表情を見せるM。告白時独特の妙な居心地の悪さを無視するかのように、痰が絡んだ大きな咳が私の口から出る。勢いで体が一瞬ぐらっとよろめく。

 

「えっと・・・ちょっと考えさせて。」

Mは数センチずつドアを閉めながら、ぎこちない笑みを浮かべ私に言った。うん、わかったとまた派手な咳を出しながら大人しく引き下がる。あのときの笑顔を未だに思い返すが、心なしかちょっと気味悪がられていたような気がしなくもない。Mがドアを閉めてしまうと、一気に力が抜けていくのが分かった。へなへなとその場に座り込みたい衝動を抑え、私はエレベーターのボタンを押した。

 

 

言うまでもないが、結果は「ごめんなさい」に終わった。これは至極当然のことである。もし自分がこんな半ゾンビ男に告白されたらお断りするに決まっている。なぜこの人はこんな体調で想いを告げに来たのだろう。マスクもしないで思い切りせきこんで。風邪移す気なの?看病してもらいたくてやってきたの?っていうか相談は?体に鞭打ってここまでやってきた俺カッコイイとか思ってんじゃないの?どこまでいってもマイナス要素しか浮かばない。告白は自分本位でやるべきものではないのである。

 

ちなみにその後Mとはどうなったか。この事件を境にしばらく距離を置かれていたが、ひょんなことから一年後また出会うことになる。その話は今回の告白エピソードよりもはるかに酷いのでまたいつか綴ろうと思う。

 

以上が私の告白失敗エピソードである。

告白失敗談なら割と自信があるので、いつかめちゃめちゃ暇なときに作品集にしてみたい。

(でもこれ以上、話数が増えるのはイヤだ)

 

 

笑。

 

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告白して失敗する奴にありがちな痛い思考を自省の念とともに解説してみた。

「来るべき〇月〇日。俺はあの子に告白するんだ・・・!」

真夜中酔っぱらって決意を固め、彼女の凛とした顔を頭の中に思い描く。優しく上品で非の打ちどころのない彼女。正義感も強く誰からも慕われる存在。

同じ空間にいるだけで、自分が窮屈な世界から解放されたようになる。彼女のことを考えるだけで、俗世で汚れてしまった胸の中に桃色の花が咲き誇る。

愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない。美しい夜空もとろける。ああ、付き合ったらあんなことやこんなことをたくさんして、想像もできないような乱れた表情を私に見せてくれるのだろうか。

魅惑的な二つの山にむしゃぶりつきたいという破廉恥な翹望は、ジョニーを今にもはち切れんばかりに膨張させている。いざ秘密の花園へ船をこぎ出そう。朝な夕な、互いの汗と汗で身体を紡ぎ合おう。この気持ちはもう、誰にも止められないぜ・・・。

うへへへ・・・。

      

うむ、このケースはたいてい失敗する。これは青年が体の隅から隅まで肉欲にまみれているからとかそういうことではない。(いや、この雰囲気が相手に駄々洩れだったらあれだけど)

 

なぜ失敗するのか、それは告白する日を自分本位のタイミングにしているからである。

自分の決意がピークになる瞬間を「この日」に設定しただけであって、そこに相手の意思は関係してこない。

デートを数回重ねたとしても、自信がついてきたのは自分だけである。自信と成功率は比例しない。「勘違い」というよくやりがちなミスはここで生まれることが多い。

自分を査定する時間がまだ足りない相手に対して、「三回飲みに行けたから」とか「ラインの返信が以前より早くなった」などと浅い根拠のもと告白するのは非常に危険である。

 

告白はタイミングが命。これは間違いない。状況を客観的に見ながら、焦らず相手の様子を探り続ける。「よさげ」なポイントだけ見て自信満々なのは、痛い痛すぎる勘違い野郎のすることだ。

私自身、めちゃめちゃめちゃめちゃやらかしている。いけるかなあ、大丈夫かなあなどと不安ぶって、胸の内では「割と勝率あるんじゃね」と鼻息荒く興奮していた。
原水不明ながらひたすら湧いていた、謎のポジティブ思考。過去に戻って思い切りひっぱたいてやりたい。狂恋に溺れた阿呆男子め。いくら恋に盲目になったとて、せめて杖だけはつけ。

 

人を好きなるのはとても素晴らしいことだ。

恋は人生を彩ってくれる。

だがしかし、一方通行を無理矢理押し通そうとしてはいけない。めまぐるしい胸算用もポジティブばかりでは破産する。

とはいえ、こんな理論で上手くいかないのが恋の呪いである。いくら頭ではわかっていてもグイグイいっちゃう。選択を誤る。ああ、どうしたらいいんですかね先生。助けてくださいよホントにまじで。

 

今回はこのような教示的記事になったが、偉そうなことばかり述べていると著者離れが起きそうなので、次回は実際に告白で失敗した話を綴っていこう。

そんなわけで【今週のお題「告白します」】ひとまず第一幕終了。

 

メンタル系塾講師 成生隆倫

(インスタフォローお待ちしてます☆)

芳根京子の性格を妄想して出演映画『ファーストラブ』の演技について語ってみた。(未鑑賞)

 「動機はそちらで見つけてください」

父親を刺殺した女子大生の言葉で物語は動き出す。

 

映画『ファーストラブ』。

北川景子さん、中村倫也さん、芳根京子さんらが出演しているミステリー作品である。

 

 個人的に芳根京子さんの雰囲気は絶妙に苦手だ。なんだろう、身近にいたらあんまり仲良くなれなさそうな。浅い平面的な会話だけしておくのが一番良好な関係を築けそうというか。

初めは親切に接してくれるんだろうけど、ふとした拍子にいきなり嫌われそうというか。

これは、たまたま見ていたドラマにちょっとめんどくさい女性の役で出ていたというのが理由なのだが、そこまでのイメージを視聴者に植え付けるというのは彼女が素晴らしい演技をする女優さんであるということでもある。決して彼女が忌避されるような女性であると言っているわけではない。本当は快活で真心溢れるステキなレディーだと思う。

 

そんな芳根さんは映画『ファーストラブ』においても複雑な役柄を演じている。

(以下ネタバレあり&よければインスタフォローしませんか)

 

前述した、父親殺しの女子大生、聖山環奈だ。

父親に逆らえず、母親の言うことを聞き、周囲の男たちを拒むことができなかった環奈。感情的になることはなく比較的おだやかな性格の彼女が如何にして殺人を犯してしまったのか。

まさに物語における要の人物と言えよう。

 

芳根さん。どんなふうに演じるんですか。
演劇業界の片隅の埃だった私としても気になるところです。

 

というわけで

今から勝手なこといいますね。

 

芳根さん(が演じてきた役の)のイメージは【いきなり豹変タイプ】だと思っている。容姿も美しく、みんなに好かれ明るい印象の彼女。だが実は胸の奥に深い闇を隠していて、そこへは誰も踏み込ませまいと常に防衛線を張り続けている。

その闇に気が付いて、フライジャルな心を支えてあげようと慈しみから手を伸ばしてしまったとき、きっと彼女は激しくこちらを拒絶してくるだろう。両手で頭を抱えヒステリックに発狂するかもしれない。しかしそれは本気で拒んでいるわけではない。自分の心の内を知られたのが恥ずかしいだけなのだ。本当は震える手をしっかり握って、苦しみもだえ続けてきた暗い世界から救い出してほしいのだ。

 

 そんな芳根さん(?)が演じる環奈。これは何だかすごいことになりそうだぞ。

序盤は原作通りのおだやかで物静かなキャラクター。だが、臨床心理士北川景子と弁護士の中村倫也が彼女の過去に触れていくにつれ、芳根さんは豹変していく。あ、違う、環奈だ。きっと身をよじらせ激しく暴れる。見ている側も胸を痛める。そして胸を抉られるような苦しい不快感を得る。これだ。見えた、俺は見えてきたぞ。

 

私は映画『ファーストラブ』をまだ観ていない。島本理生さんの原作小説を読んだだけである。

ゆえにこれはあくまでも私の勝手な想像であることを皆さまにはしつこく伝えておきたい。

 

だが万が一ということがある。

もし仮に、ここまで気儘に述べてきたた環奈像がばっちり当たっていたら・・・やっぱり芳根京子さん(が演じる多くの役)はメン〇ラだ。何度も言うがこれは個人批判ではない。むしろちょっとそれくらいの方が可愛らしいではないか。そういうのってなんだか癖にならないか、男性諸君。ねぇ、なるよねぇ。

 

くりっとした愛らしい目、スっと通った鼻筋、そしてちょっぴり小生意気そうな顎。

日々の暮らしの中で、ふとその整った顔を思い浮かべてしまうときがある。

もちろん私は彼女の出演作を全てチェックしているわけではない。ましてや熱狂的なファンでもない。ただどういうわけか彼女の存在が脳裏から離れないのだ。
「苦手苦手言っておきながら好きなんじゃん」違う。ふり幅の少ない人生を送ってきた私でもわかる、経験則的にこれは恋ではない。
ではいったいなんなのか。テレビに映っていると、手をぴたっと止め口をぽかんと開けじっと凝視してしまう。次の番組、コマーシャルに移り変わっても目の裏で残像が踊り続けている。今まで感じたことのない種類の慕情が胸を覆い尽くす。


これはもしかして私にとっての『ファーストラブ』なのか。
いいや、認めない。絶対に違う。私は芳根涼子が苦手だ。仲良くなれない。我々は相性が悪い。

28歳塾講師の淡い妄想は、いじらしくめらめらと燃える。

 

ファーストラヴ (文春文庫)

ファーストラヴ (文春文庫)

 

 

飲食店で働けなくなったので、やりたくないことをやらせるサービスに手を出してみた。

昨年4月5月の緊急事態宣言のさなか、私がかつて2年と8ヶ月勤めていた吉祥寺のイタリアンレストランが閉店した。

荘厳なピザ窯が存在感を放つオープンキッチン、様々なリキュール&ウイスキーが並ぶ長いバーカウンターまで備えた比較的大きなハコであった。

 

30年以上の歴史を持つなかなか年季の入ったオシャレな空間。あのような雰囲気のあるイタリアンレストランはなかなかないのではないかと思う。

 

2020年5月で閉店になったのだが、私はその時すでにそこを辞めており、店長から連絡があった4月の終わりにはもう店は機能を停止していた。

 

「成生は今働いてる店は大丈夫か?」

備品たちが乱雑に置かれた店内で店長は私に尋ねた。

「いや、完全にダメージ喰らってます。人件費の問題で実質私も無職みたいなもんですし。」

力なく二人で笑いながら、静まり返った光景を見つめる。

「これから先、飲食は厳しくなるな・・・。」

「そうっすね・・・。」

大して話題が発展しないまま、寂しさだけが互いの胸を通り抜けた。

 

4月、5月と完全に職を失った私。

収入はなくとも年金や市民税や奨学金など追いかけてくるものは変わらない。

今後コロナが終息するとは到底思えなかったので、ひとまず極力安定した職を探すことに決めた。

 

居酒屋、ケーキ屋、バーテンダー、中華料理屋、イタリアン。

私が経験してきたものはすべて飲食店だった。悔しいが、時世に不利と言わざるを得ないものばかりだった。「安定職」を探している以上、今まで培ってきたスキルを発揮する場を見つけることは難しいだろう。

就職は考えなかった。こんな頭の中フラッフラな自分が、正社員で長く真面目に働き続けられると思えなかったからである。

自分の経歴を見つめてみる。本当に大したものがない。資格も特に持っていない。

しいて言えば、立命館大卒という世間的に見れば良さげなものだけである。

 

「世間的に見りゃそこそこの学歴・・・」

 

ベッドに放り投げていたスマートフォンを掴み、何かに憑かれたように「塾講師  アルバイト」の文字を画面に打ち込んだ。

正直、ブランクはある。ちゃんと勉強していたのは10年前の18歳である。自分がまだ知識を脳内に維持できているのか不安要素はいっぱいだった。

 

電話で塾面接のアポを取り、当日採用筆記テストがあるということを伝えられる。

 

「英語と日本史はセンター9割でした!」

こんなこと言わなきゃ良かったんだよ。

そうなんですね!!!という電話越しの弾んだ声に呼応して噴き出す汗。

まさか20代後半になって高校生に交じり参考書を買うことになるとは。はぁ…。

(ちなみにこれはおすすめ!)

 

 

 

あれほど必死に準備した面接前夜は初めてだった。

 

 

結局私は採用面接に合格し、晴れて塾の先生に。試験も中学領域だったのでなんとかなった。

まじでよかった。

 

ここから先生としての顔を持つ日々が始まる。

そう思うと気が引き締まった。

今まで、お客様の様子を伺いながら、ご来店中の時間を楽しんでいただけるサービスを尽くしてきた。心地よい空間を提供することに力を注いできた。

でももうそうじゃない。生徒たちからある程度慕われ、授業に集中させ、ちゃんと宿題をやらせ、成果を出させなければならない。それが彼らにとって心地よいものでなくてもやらせなければならない。

今回のお題「#この1年の変化」。私にとってはサービスの提供の仕方である。

人に何か影響を与えるという点では同じかもしれないが、やはり娯楽と教育では大きく異なる。勉強を楽しませることはこちらの役割として然りだが、やらなくていいのなら参考書もペンも捨てて遊びまくるだろう。

 

楽しむために来ている人と、やりたくないことをやるために来ている人ではサービスが違う。同じ業界にいるだけではきっと学べなかったことだろう。

現在、塾講師と居酒屋とバーを掛け持ちしているが、自分自身のいろんな顔を見つけられてとても楽しい。変化からのレベルアップを求めて意識高い系になってやろうか。

 

なんて言っちゃってる時点でたぶん俺、

勉強大好きだわ。(笑)

 

これも大きな1年の変化と言えるだろう。

 

メンタル系塾講師  成生隆倫

アフォリズムの底力 -- 英語で味わう世界の名言・放言・大暴言438 (底力シリーズ12)
 

(これ最近のおすすめ!シニカルで面白いよ!)

 

バレンタインにチョコはいらないから、酒を奢ってくれないだろうか。

いよいよバレンタインデーがやってくる!!

どきどき。

新しい恋が始まるスーパーイベント!!

どきどき。

 

なんて思っていたのはいつまでだっただろうか。

「学校にチョコは持ってきちゃいけません」と先生に言われながらも、見つからないようにひっそりと好きな男の子の机もしくはロッカーに入れる。

そして先生もなんだかんだで黙認。(むしろ自分にもくれないかな、なんて思っていた先生を私は知っている)

両想いになれるかな・・・可愛らしい恋心が小さな胸でぷくぷくと膨らむ。

男子勢は「誰かからもらえるんだろうか」と不安になりながら、ライバルたちの様子に目を凝らす。ある種、殺伐とした空気だったかもしれない。

 

そんな思春期の記憶を思い返してみながら、現在の自身のチョコレート事情に目を向けてみる。

実は、私はそんなにチョコが好きじゃない。

昔は好きだったけれど、酒を覚え煙草を覚えどんどん夜の世界を知っていくにつれ、気が付けばそんなに好きじゃなくなっていた。

ウイスキーとよく合うとされているが、私はむしろチーズを食べたい。(ワインかよ)

 

また、チョコレートを食べる快感はキスで得られる快感の4倍という研究がある。

まあ、脳が興奮するという面では一緒なんだろうけど。

正直そんなんで性欲が満たされるなら風俗じゃんじゃん潰れてるわ。

俺も我慢してチョコ食べるわ。

 

というか、もはやバレンタインデーにチョコを渡さなくてもいいのではないか。

チョコが好きな人にはチョコを渡せばいいと思うが、糖質を気にしているとか舌に合わないとかそういう人には違うものを渡してもいいのではないか。

アーモンドアレルギーの人にをうっかりアーモンド入りのチョコを渡して拒否されるといったようなリスクもなくなるし、一緒に飲みに行って、「バレンタインデーだから」と、少し多く出してみる方が関係性の発展にも繋がるのではないか。

 

とまあバレンタインデーの持論を述べてみたのだが、やはり貰えないよりも貰えた方が嬉しいのは確かである。

そのあとの処理に困るだけであって、「〇〇個貰った!」というのは男としてのステータスであることには間違いないのだから。

なんてことを言っている時点で、あいつにあげても無駄だからと義理チョコさえ貰えないという事態は目に見えている。くそ、ちょっと寂しいぞ。

 

はい、そんな具合でこんな廃れたブログを読んでしまった皆さま方に、おすすめのお口直しを紹介しよう。

映画『バレンタインデー』。ロサンゼルスを舞台に繰り広げられる恋愛群像劇だ。

アン・ハサウェイジュリア・ロバーツアシュトン・カッチャーなど豪華俳優陣を迎えた、ハートフルストーリー。様々なキャラクターが出てくるため、一番感情移入できる人物を見つけて鑑賞してみると楽しい。

 

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以上、【今週のお題「チョコレート」】ということで、バレンタインデーについて綴ってみた。みなさま、素敵なバレンタインを。

(私も生徒から貰えないかとこっそり期待している)

 

離婚したらご祝儀返してくれないか?~ザ・離婚式~

小川彩佳アナウンサーの夫の不倫事実が発覚した。なんでも、緊急事態宣言のさなか愛人女性と密会していたようだ。

正直他人の不倫劇だし特別大きな感情を抱くことはないが、どうも最近そのような残念なニュースが多くなっているように感じる。

東出昌大さんと杏さんに関してはその後離婚に至ったが、この夫妻はどのような決断をするのだろうか。


このような不倫などの要因により悪意を抱いてしまうケースには当てはまらないであろうが、世の中には「円満にお別れをしたい」と、とある催しをすることがある。

それが離婚式と呼ばれるものだ。

まぁ簡単に言ってしまうと結婚式の逆バージョンである。

仲人ではなく裂人(さこうど)が挨拶を行い、旧郎と旧婦が離婚届に署名と捺印を行う。
ケーキカットの代わりに、指輪返還もしくはハンマー等による指輪圧砕の儀。
それぞれ「良くも悪くも言い残したこと」を語り、心の小さな棘を清算する。
ブーケトスを行う場合もあるらしいが、こちらは旧郎が投げることが多い。
ブーケに使われる花はユリオプスデージー花言葉は「円満な関係」。受け取った人は「円満な離婚」ができるとか。
(いや、ただの嫌な予言だろこれ)


とにかくなんだか絶妙な闇が感じられる離婚式であるが、これに対して私はひとつだけ許せないことがある。

それは「ご終儀」の存在である。
ご祝儀ならぬご終儀。上手い。座布団一枚。

ご祝儀の相場は3万円~5万円だが、ご終儀の相場は3000円~5000円であるという。


え、待て待て待て。

離婚も祝えだと?いやいや参加している側もそれなりに複雑な面持ちだからな。

「おわかれおめでとー!!🤩✨✨」
なんて言えねえだろうが普通は。


むしろ結婚式で使ったご祝儀を返却しろよ。
30000円~50000円って結構でかいからな?
それきっちり返してくれたら祝うわ。
渡辺謙もびっくりの好演技で明るく振舞うわ。
しかもご終儀は数千円が相場って。
おいおい、大学生の飲み会かよ。


つーかそもそも離婚式とかやんなくていいじゃん、

やるならふたりでやりなよ。大衆監視を利用して未練なくそうとするのやめろよwww

あ、結婚式はめっちゃ参加したいっすよ!🤟🤟🤟
ほんとにほんとにほんとにね!♥️♥️♥️


というわけで今回は、結婚した親友に幸せになってほしいという個人的願いをこめての記事でした(笑)

ならもっと明るい内容書けよ、という声が飛んできそうですがまぁそのうち書くから許してくれ。

このご時世で「わいわいウェイウェイ」とお祝い出来ないのが心苦しいですが、落ち着いたら高校時代のやつらと一緒に飲みに行きましょう。

楽しみだね!🍻🥰🥰🎉🎉🎉

最後になったが、親友よ、結婚おめでとう。
笑顔あふれるステキな家庭になりますように。


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