「ライブ配信」を毎日平均6時間やりまくった、コロナ渦8か月の日々をギリギリまで激白してみた。【連載記事vol.6】

 前回の【vol.5】はこちら。

takamichi-nariu.hatenablog.com

 

「実は、スピリチュアルとかオカルト系も好きで!京都に住んでいたころは、神社巡りしまくってました!」

 

酒の勢いも相まって、気が付けば私は興奮気味にまくしたてていた。

 

「深夜の神社に行くのが特に好きで。昼間と空気が全く変わるじゃないですか。ちょっとおどろおどろしい雰囲気もありつつ、神聖さも感じつつみたいな。あれが癖になっちゃうんですよね。」

「え!何やってんの!?変なの憑いてくるからやめな!」

「え、まじすか!?」

「夜は神様がいなくなる時間だから、あまりいい場所じゃなくなるのよ。低級な動物霊とかがやってくるから絶対に行かないほうがいい。」

「うわあ、勉強になります!」

「マジで気を付けな。」

 

Yuiさんは九州に住んでいる30代前半の女性占い師だった。プロフィールには【霊視・スピリチュアル・占い】と記載されていた。まさかそのようなジャンルの方が来てくれるなんて思ってももみなかったから、ものすごくテンションが上がったのを覚えている。姉後肌ムンムンで様々なアドバイスをしてくれる彼女に、私はかなり懐いていた。困っていること、悩んでいること、多くの相談をした。「X」の最重要要素である集客を手助けしてくれたのも彼女であった。

 

「せっかくイケメンなのに、全然人来ないねー。」

「お世辞でも嬉しいです。ま、集客に苦戦はしてますが・・・笑。」

「相談に乗ったら、ちゃんとアイテム貰ってる?」

「うーん…。正直、アイテム投げてって言いづらくて。チャンネル登録者増やすために始めたから、あんまり興味が無いっていうか・・・。」

「はあ、しょうがないなー!じゃあとりあえず私が一回投げてあげるわ。」

 

そう言うとYuiさんはすぐに100円相当のアイテムを放った。虹色に光る無数のシャボン玉が下から上へと画面を通り過ぎてゆく。過疎化にあえぐ殺風景な私の配信は、一瞬の煌めきを見せた。

突然の投げ銭に驚き、慌てて感謝の気持ちを述べる。だが、その言葉は無視され、代わりにアイテム効果の解説を述べた長文コメントが返ってきた。

 

「コメント数やアイテム数によって応援ポイントっていうのが上がっていくの。言い換えれば、これは盛り上がり度ね。盛り上がり度が高いほど、上位おすすめライバーに表示されやすくなって、初見リスナーさんが来やすくなるのよ。そして、それにダントツで影響を与えるのがアイテム。だから、基本的にはアイテムを貰わないと人はやってこないの。」

 

「乾杯アイテム」を貰いまくった後に、どういうわけか新規リスナーがわんさかやってきた、たかちゃんの異様な配信光景を思い出してハッとした。(連載vol.5参照)

100円相当のアイテムが次々と飛んだおかげで急激に応援ポイントが上がり、彼女は上位におすすめ表示された。そしてそれを見たリスナーたちは、「お、菜々緒似の綺麗なお姉ちゃんじゃん。少し覗いてみようかな。」となり、続々と入室し始めたということだ。

なるほど、謎が解けた。集客のポイントはここにあったわけだ。

 

「どうも!こんにちはー!」

もうご新規さんがやってきた。FUMIさんという女性だ。

「やったね、新しいリスナーさん来たじゃん!」

「ありがとうございます!Yuiさんのおかげです!」

「じゃあ、あたしは帰るねー。今日も頑張ってー!」

そう言うと、Yuiさんは颯爽と配信から出ていった。なんてありがたい人なんだろう。彼女もライバーとして活動しているらしいので今度お礼をしに行こう。無課金だから、投げれるのも少額アイテムで申し訳ないのだけれど。

 

「FUMIさん、初めまして。恋愛心理学アルチューバーの成生です。もし、恋愛に関するお悩みありましたら、どうぞご相談していってください。」

 さあ、せっかく頂いた機会だ。初見リスナーさんに全力で対応しよう。普段より大きい金額のアイテムを得たおかげで、その日はやる気に満ちあふれた配信が出来たと思う。

 

 

                            ***

 

 

大きいアイテムを投げてもらう快感は凄まじく、小さいころにお小遣いをもらった時のような喜びを私に与えてくれた。1円や5円、時折10円ほどのものはちょこちょこ貰っていたが、正直それでは心は満たされなかった。自分と同じような無課金リスナーが多かったからこればかりは仕方ないのだが、一度味わってしまうとまた求めたくなるのが哀しき人の性である。Yuiさんが配信に来てくれるたびに、100円以上のアイテムを期待してしまう自分がいた。実際、彼女は誰よりもアイテムを投げてくれた。私は次第に彼女の舎弟のようなキャラクターを演じるようになり、言うことを何でも聞き入れるようになった。

 

scene1

パワーストーンのブレスレット、ちゃんと浄化してる?」

「水晶の上に乗っけて保管してます。」

「見せて。」

私は手のひらにちょこんと収まるほどの小さなクラスター水晶を画面に映した。

「それじゃ小さすぎて効果薄いよ!いい?ちゃんと月光浴させなさい!新月と満月のときに月明かりに照らしてね!」

 

 

scene2

プロフィール画像、変えたほうがいいよ。」

「え、割と写りいいのつかってるんですけど・・・。」

「インテリ臭がしないの。そうだ、メガネかけて撮り直そ!」

別にインテリ目指してるわけじゃないんだけどな、という言葉は飲み込んだ。

「心理学でしょ、メンタリストDaiGoみたいにインテリ感出したほうがいいから!今のままじゃよくないよ!すぐ変えよう!」

 

 

仕事もなく飲み会もなく、ただ家にこもりきりの自粛生活を送る私にとって、Yuiさんの言葉は常に新鮮だった。説教じみたアドバイスはきっと、霊視などによるスピリチュアル的なものなのだろう。私はYuiさんに思い切り傾倒していた。恋愛相談に乗ったあとの疲れや、緊急事態宣言下の憂鬱、彼女はそれらをすべて吹き飛ばしてくれる。今から思えば、恋に似た感情を若干抱いていたのかもしれない。配信終了後には毎日のようにTwitterのDMでやり取りをした。ハイハイ、と軽くあしらわれることも多かったけれど、なんだかんだで毎回配信も来てくれるし、それなりに好いてくれていると自覚していた。

 

 

そんな彼女があんなにも簡単にいなくなってしまうなんて、その時は露ほども思っていなかった。

 

つづく


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「ライブ配信」を毎日平均6時間やりまくった、コロナ渦8か月の日々をギリギリまで激白してみた。【連載vol.5】

 前回の【vol.4】はこちら。

 

自分の配信になぜ人が来ないのか、それが私の一番の悩みだった。

人が集まらなければ新規リスナーの恋愛相談もなく、Youtubeの宣伝のしようがない。もちろん私は発信者だから、自己顕示欲も満たされたいと思うのも当然だった。

 

他のライバー(配信者)はいったいどのようにリスナーを獲得しているのだろう。もちろん、長く続ければ続けるほどリスナーは増えていくのであろうが、私と同じ時期に始めて、すでにそこそこの人気を得ている方々もいる。

彼らはどんなコンテンツを武器にして、リスナーとコミュニケーションを深め、人を集めているのだろう。勉強と研究のため、配信の合間に私もリスナー活動を始めてみることにした。

 

ヒントはきっと転がっているはず。

 

 

           ***

 

 

たかちゃんは、黒髪ロングヘアーがよく似合う、菜々緒似の綺麗なお姉さんだった。

「飲みながら配信してます☆」とプロフィールに書いてあったので、同じような配信スタイルかもしれないと思い、入室してみた次第である。

「どうもおー。たかちゃんでーす!!よろしくおねがいしまーす!」入るやいなや、陽気な挨拶で迎えてくれた。酔っているのだろうか、なんだかご機嫌な様子だ。若干呂律も回っていない。机の上には宝焼酎とお茶のペットボトル、そしてぎっしり氷が詰まったグラスが置かれている。

 

「初めまして!成生と申します!「X」はまだ始めたばかりで、あまりよく分かっていません・・・。新参者ですが宜しくお願いします。」

「成生さん、こちらこそよろしくですー!あたしもまだ始めて1週間くらいなんで、一緒に頑張りましょー。テキトーにお酒ガンガン飲んでるだけですけどねー。」

けらけら笑いながらたかちゃんはグラスに手を伸ばす。

 

10人ほどのリスナーがそこにはいた。その時のたかちゃんのフォロワーは100人ほどだったので、初見がいなかった場合、10分の1が来ていることになる。すごい出席率だ。1週間でこの数字なら5月にはめちゃめちゃ増えているのだろう。

 

「たかちゃん、飲みすぎw」

「何時から飲んでるのー?」

「今日も可愛いね!」

 

様々なコメントが画面に次々と表示されていく。それらをひとつひとつ読み上げながら、それぞれに返答をしていくたかちゃん。彼女とお喋りしたいからか、みんなどんどんコメントをしていく。しかし、ほろ酔い状態のふわふわした口調ゆえ、読むスピードがだんだん遅くなってきた。コメント欄が渋滞してきたため、私のコメントを認知してもらえるのもまだまだ先になるらしい。まぁ、ゆっくり美女でも拝みながらじっくり待つか。

 

そんな時だった。

 

「よーし今日も飲んじゃうぞー!明日は休みだー!みんなで乾杯したーい!」

突如たかちゃんはコメントを読み上げるのをやめ、甘えた笑顔を我々に振り撒いてきた。ああ、綺麗とかわいさが程よく融合してるなぁ、こういうのを美女っていうのかなぁ・・・なんてぼーっと見とれていると、いきなり、画面いっぱいに、「かんぱ~い」のアイテムエフェクトが表示され、たかちゃんの胸元が華やかに彩られた。100円ほどのアイテムだからか、いつも私が貰っている1円や10円相当のものよりも派手な演出である。

わああああ、っと嬉しそうに手を叩いたたかちゃんは、「Aさんありがとうー!飲みまーす!せーの、グイ、グイ、グイ・・・」と、セルフでコールをし始め、机の上にあった緑茶割りを一気に飲み干した。口元をティッシュでぬぐい、満足げな表情を浮かべながら「ああん、まだまだ飲んじゃうよー」とさらにリスナーを煽っていく。再びまた乾杯の音頭が始まる。きらびやかなエフェクトが止まらない。

おお、なんだかこのお姉さんすごいぞ。部屋で1人、スマホに向かって一気飲みを敢行するというのは、よくよく考えてみたら妙な行為である。圧倒的なパフォーマンスはもちろんだが、それを平気でやってのける度胸に感銘を受けたのであった。アイテムをあおり、投げ銭をしっかり頂戴していく。その手口の巧妙さにも脱帽せざるを得なかった。

10人ほどだったリスナーの数は、1時間でいつのまにか15人ほどに膨れ上がっていた。途中で抜けた人もいたため、トータルで30人ほど配信に来ていたと思う。しかも、約半数が新規のリスナーだった。6時間配信して4、5人しかやってこない私の配信とは雲泥の差である。

そりゃあ美女がハイテンションでお酒飲んでたら人気になるよね、というのが率直な感想だった。勉強のためにこの配信に訪れていた私も、気が付けば彼女の虜になっていたのだから効果は絶大だ。美女と酒が飲めない自粛期間ゆえ、ライブ配信でそういった気分を味わう。間違いない、需要はある。

 

ただ、そこでひとつ疑問が生まれた。

それは、数多のライブ配信者がいる中で、どうやってそのような美女を見つけ出すのかということである。以前、【vol.2】の記事で『X』のシステムについて触れた。その項目にファミリーというコミュニティチャットがあるのだが、それに加入したリスナーは、視聴中に「タグ」をつけることが可能になる。積極的に様々なタグを付けていくことは、配信者を応援することにつながる。タグは新規リスナー獲得に大きな役目を果たすため重要度が高い。リスナーは、自分が興味のあるキーワードでタグ検索をして、新しい配信者を探すことが多いからだ。

たかちゃんの場合は、「お酒大好き黒髪乙女」「菜々緒似美女と乾杯しよ」「美女、絶賛酔っ払い中」「ストロングゼロはノンアルですw」「肝臓は成長する」など、お酒に関するタグがほとんどを占めていた。実際私も「お酒」で検索して彼女の存在を知ったので、やはりこれは重要な機能なのだと思う。

 

だが、それだけでは、新規を獲得し続け、根強いファンを多く持つ人気ライバーになることはできないのが実情である。

私も、ユサちゃんや千草ちゃんにタグをつけてもらっていたのだが、たかちゃんほどの新規は獲得できていなかった。「恋愛相談募集中!」「恋に悩める人を救います!」「お酒飲みながら恋バナ聞くよ」等、彼女たちは様々なタグをつけてくれた。だが、どういう訳か思ったほどの効果は期待できなかった。単純に恋愛相談に需要がないのかとも思ったが、来るときは来るのでそうではないのだろう。

 

なぜあんなにもたかちゃんの配信に新規リスナーがやってきたのか・・・。

その謎は、とある人物の登場によりすぐに明かされる。まさに彼女は青天の稲妻だった。いよいよ私は、「X」における集客で、最も肝心なポイントを身をもって知ることになるのである。

 

つづく

 


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「ライブ配信」を毎日平均6時間やりまくった、コロナ渦8ヶ月の日々をギリギリまで激白してみた。【不定期連載vol.4】

 前回の【vol.3】はこちら

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「大好きな彼と付き合いたい」

「大好きなあの子と付き合いたい」
 
 
よくある相談である。というかそんなのばかりである。
相手がどんな人を求めているのか、何が好きなのか等をしっかりリサーチして、効果的なアプローチを仕掛けていくことが重要です。今やっていることが自己本位なアクションになっていないかどうか、まずは振り返ってみましょう。
と言ってしまいたいところだが、そんなものではチャンネル登録をしてくれないので、真摯にコメントを読んでいく。膨大な量の恋のあらすじに目を向けながら、最後にがっちりアドバイスをするというのが大抵の流れ。始めたころはリスナー数が少なかったため、相談に一人あたり20分ほどの時間を割くことが出来た。
そんななか、唯一、恋愛相談に40分を費やした女がいた。名前はリンカ。壮絶な8か月の日々の中で、一番長い相談時間を設けた女である。衝撃的な相談内容と高火力な
キャラクターは、今でも私の脳裏に血よりも赤く焼き付いている。
 
 
「私には、好きな人がいる。私は、彼と、付き合いたい。」
 
なんとなくこの1コメント目から妙な感じがした。多分この人はやばい人だ、本能的感覚によるものだろうか、瞬時にそう思った。これでもかと加工されたリンカの自撮りアイコンが毒々しく画面に映る。こちらを見つめる虚ろな目は見ているだけで呪われそうだった。だがしかし、チャンネル登録者数増加のためである。接客せねばなるまい。この日は常連リスナーのユサちゃんも千草ちゃんもなぜか来ていなかった。リンカと完全マンツーマンである。
 
「そうなんですね。今の関係はどんな感じですか?」
丁寧に無難に対応をしていく。
「まず、彼は、私のことを、知らない。」
「うーん・・・。自分の存在を知ってもらうところからはじめましょう。会話しないと関係は始まりませんからね!彼と話すチャンスってありますか?」
「彼は、歌を作るのに忙しくて、私に会えない。SNSも、やってるかわからない。連絡が取れるのは、オフィシャルサイトの、メッセージフォームだけ。」
 
彼女の奇々怪々な発言に思考が追いつかなかった。オフィシャルサイト?メッセージフォーム?‘‘私に’’会えない?画面越しに数秒間固まってしまった。
これらの情報から察するに、相手はバンドマンなのだろう。ただのバンギャなら全く問題ないのだが、これはメンヘラが相乗された危険なタイプだ。信号はほぼ赤である。
 
「…えー、その彼は…バンドマンの方なんですか?」
一応、おそるおそる聞いてみる。
「そう。ジロー。」
「ジロー?」
「知らないの?」
「いや、ジローさんってたくさんいるから。」
はぁとうんざりしたため息が聞こえた気がした。
GLAYの、JIRO。覚えて。」 
 
思い切り面食らった。てっきり小規模なビジュアル系バンドのメンバーにガチ恋しちゃってるだけかと思っていたのだが、それを大きく越えてきた。超大御所ベーシストの名前をまさかこんな形で聞くとは。これは冷やかしなのかネタなのかガチなのか。まあ雰囲気からして、確実に後者なんだろう。いや、冷やかしなら冷やかしって言ってくれていいんだよ。わたし、今なら怒らないから。というか、そう言ってほしいよ、もはや。
 
「…正直、ちょっと難しいと思いますよ。JIROさん、奥様もいらっしやいますし。」
もはや、この返し方が正しいのか間違ってるのか分からない。やんわりと焼け石に水のような正論(?)をぶつけてみたが、やはりリンカも簡単には引いてくれない。
 
「でも、私は、彼のことが、好き。どうしても、付き合いたい。」
 
一歩間違えれば犯罪の領域に踏み込みそうである。ちょっともう、この人恐い。
 
「…まず相手に自分の存在を知ってもらうところから始めましょう。ファンレターを送るなど、様々なアプローチをしてみては?」
しょうがないので多少付き合っていく。
 
「彼は、忙しい。読んでくれるか、わからない。」
「やってみないと分かりませんよ。」
「彼の、忙しさを、あなたは、知らない。」
「リンカさんはどれだけ忙しいか知ってるんですか?」
「ツアー、レコーディング、忙しいと思う。私が、彼を、癒やしてあげたい。」
 
句読点の多さ及び、謎の上から目線にイライラし始めていた。恐怖を通り越すと、次は苛立ちに変わる。さっさとこの配信から出て行ってくれと願うばかりだった。しかしその気持ちをいたぶるかのように、リンカはJIROに対する激しい愛情を語りだしていく。
その後も、同じようなやりとりが延々と繰り返すが、最後の方は私も匙を投げて「いや、もうJIROさんは無理だから」と乱雑にはね返すようになっていた。「あなたに、私の、愛は、わからないでしょう。」と言われたがそんなの当たり前である。むしろ分かりたくもない。
出ていく間際、リンカは1円相当のアイテムを投げていった。
「これは、あなたに、あげるものじゃない。JIROに、あげるの。」
意味不明の投げ銭である。一応40分も相談に乗ったんだし、もうちょっと投げてくれてもいいんじゃないかとは思ったが、これ以上不毛なやりとりを続けて無駄な疲弊したくはない。もはやチャンネル登録も結構である。
ちなみに、40分で1円貰っても、俺もJIROも嬉しくないぞ。
 
                    ✳✳✳
 
なんでこんなにしんどいんだろう。配信終了の文字を押したあと、そのまま床に座り込んでしまうことが増えた。グラスに残った少量の焼酎を飲む気力もなく、溢れてきそうな涙をこらえるばかりだった。
6時間以上の配信。来てくれるリスナーは大体4,5人。新規は1日あたり1人ほど。投げ銭もほとんどない。チャンネル登録者数も伸びない。この疲労感に相当する見返りを感じられず、始めて間もないながら、「やめたい」と何度も思った。でも、緊急事態宣言により仕事もなくなり、Youtube活動もうまくいっていない最中。
自分に出来ることはライブ配信だけだった。
いつか人がたくさん来てくれると信じて、毎日毎日やり続けるしかなかった。
 
つづく
 

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「桜の樹の下には死体が埋まっているんだって!」と若者たちは燥いでいた。

桜の樹の下には死体が埋まってるんだって!」

 

満開を過ぎた桜を見ながら、若者たちはウキウキと燥いでいた。

深夜1時を回ったこの大きな公園は閑散としていて、昼間の花見客が嘘のようだった。遠くのほうにちらほらと人影が見えるが、きっと彼らも夜の花見に来たのだろう。というか、花見を口実にただ野外飲み会を開きに来たのだろう。このご時世であろうとおかまいなしだ。まあ、僕らには関係ないことだけど。

夜は僕らのものである、という認識はもうすでに古き認識となった。朝も夜もいつだって彼らは活動している。夜はみんなのものでいい。夜桜だってみんなのものでいい。酒を酌み交わして一緒に楽しむことはできないけど、同じ景色を共にしているだけで十分だ。

散り落ちてくる桜の花びらをつかむ遊びを幼いころよくやった。すばやく腕を伸ばすと、その風圧で花びらは逃げてしまう。そんな動作を数回繰り返すが、結局取れずに地面に落ちる。妙に悔しさが募る遊びだった。

もうすでに葉桜が目立ち始めている。花びらはなかなか落ちてこない。

 

桜の樹の下に屍体が埋まっていようがいなかろうが、桜が綺麗なことに変わりはない。こんなに美しいのだから、屍体が埋まっている?死んだ人間がそんな力を持っているわけないじゃないか。彼らが「綺麗だ!」って言わなければ桜はただの植物でしかない。僕らがやっているのは桜を咲かせることであって、綺麗なものにしてくれるのは彼らなのだ。神秘的な感じにしてくれるのは嬉しいけど、なんだかおこがましいような複雑な気分になる。

桜の樹の下には死体が埋まっている!なんていちいち騒ぐ必要はない。生と死の風流に酔う必要もない。君らは花見酒を呑んでいるだけでいい。

その姿を見ているだけで、味くらいは思い出せる気がする。

 

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「ライブ配信」を毎日平均6時間やりまくった、コロナ渦8ヶ月の日々をギリギリまで激白してみた。【不定期連載vol.3】

前回の【vol.2】はこちら。 

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午後3時、歯を磨き顔を洗う。髭を剃り、BBクリームで肌の見栄えを整え、入念に髪型を作っていく。今日は昨日より遊ばせた感じにしよう。毛先を軽くねじってハネをじゃんじゃん作っていく。ううむ、良い感じだ。橋本環奈が配信を見に来ても恥ずかしくないぜ、と鏡に向かってにんまりする。

出来上がった顔面を堪能したのち、洗面所を出てキッチンへと向かう。業務用の4リットル焼酎を氷の詰まったグラスになみなみとそそぎ、浄水をペットボトルに入れていく。水割りセットを完成させ、それらを持って自室へと戻る。そしてベッドに放り投げていたスマートフォンへと手を伸ばす。

さあ、今日もライブ配信アプリ「X」の冒険を始めよう。

 

               ***

 

ユサちゃんと千草ちゃんは最初の常連リスナーだった。

ユサちゃんは4月から大学生になったのだが、緊急事態宣言で大学がまだ始まっておらず、暇を持て余している女の子。千草ちゃんは24歳のフリーター。現在は仕事をしていないらしいが、去年までキャバ嬢をしていたとのこと。

駆け出しライバー(配信者)ゆえそれほどフォロワーもいない私にとって、毎回来てくれるリスナーは貴重な存在だった。配信を開始しても誰も来てくれなければ、YouTubeの宣伝のしようがないし、なにより、悲しい寂しいつまらない。緊急事態宣言で人と交流する機会が一切減ったので、せめてこのバーチャルな空間だけでも人と話したかった。また、自分に人気があるのかないのかまだはっきりしていない時期だったし、配信しても誰も来ないという事態は、‘‘発信者‘‘としてものすごく不安だった。だから、黎明期を支えてくれたユサちゃんと千草ちゃんはとても有り難かった。

 

2人はすごく仲が良かった。好きな人がいるが、付き合うまでには至っていない。そしてそれが遠距離である、という状況が共通していたからかもしれない。新規のリスナーさんが私の配信にやってくるというのは稀だったので、ほとんどの時間を3人きりで過ごした。YouTubeの次回作の話や過去作の感想など、他愛ない世間話で盛り上がりつつも、彼女たちの恋愛相談が主な話題だった。

 

「千草ちゃん、こんにちは。今日もよろしくね!」

配信を開始すると、千草ちゃんはいつもすぐにやってきてくれる。

「成生くん、どうしよう。」

「ん?なにかあった?」

「うち、彼から嫌われたかもしんない」

「え、どうして!?」

「既読になってるんだけどラインが返ってこないの!」

「どんなライン送ったの?」

「夜勤が終わる時間に、おつかれさま♡って送ったの!」

「それだけ?」

「あとは、彼が大阪住んでるからコロナ終わったらユニバ行こうねって。たこやき食べたいねって…。あんまりしつこくラインし過ぎると逆効果になっちゃうかもって成生くん言ってたよね。これってしつこい?どう思う?」

「いや、単純に疲れてるだけじゃない?彼、夜勤でしょう。嫌ってないと思うよ。」

「そうかな、大丈夫かな。不安だよお。返信、待った方がいい?」

「うん、普通そんな簡単に嫌わないから大丈夫だよ。」

「わかった!ありがとう!」

ちょっと疲弊しているとユサちゃんがやってきた。

「成生くん、千草ちゃん、こんにちは!」

やっほー!ユサちゃーん!興奮気味に千草ちゃんが挨拶を返す。

「成生くん、相談があるんだけど。」

本日2度目の相談。毎日2人の相談聞いてるな俺、と心の中でツッコみながら酒を舐める。

「どうしたの?」

先月まで女子高生だった彼女の悩みを聞いていく。

「大学始まったら、新しい出会いもあるのかなあってー。」

「たくさんあるよ!あれ、片想いの彼はどうなったの。」

「えーとね…もし付き合えても遠距離だし寂しくなっちゃうかなぁって。分からないけど、相手も彼女いるかもしれないし。…諦めた方がいいのかなぁって!ねぇ、どうしよう。」

7割焼酎の水割りをがぶっと飲み干す。

これが私流の気合い入れだ。

ああ、今夜も長くなりそうな予感がする。

 

正直、恋愛相談を聞くのは結構疲れる。相談者はネガティブな感情をぶつけてくるから、こっちはそれに負けないポジティブで立ち向かわなきゃいけない。そして第三者的立場から見た冷静な目線をキープし、相手をもてなさなくてはならない。メンタル的になかなかハードな仕事だ。

もともと、恋愛相談はYouTubeの登録者数を増やす目的で始めたのだし、長々とやってしまってはもはやカウンセリングになってしまう。それはコンセプトとは違う。

きっと明日には、ラインが返ってきた千草ちゃんが惚気てくるだろうし、ユサちゃんもやっぱり彼を諦めきれないって決意表明しに来るのだろう。もちろん、それらもちゃんと聞くつもりだが、やはり私は、チャンネル登録者増加のため新規リスナーさんの恋愛相談をメインでやりたい。

 

そもそも、どうして人が全然来ないのだろう。プロフィールに『恋愛相談します!』って書いてるし、割と需要あるはずなんだけど。

寝ても覚めても頭の中は新規獲得でいっぱい。ガールズトークで埋まるコメント欄を見ながら、私は小さな焦燥感を感じていた。

 

つづく


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「ライブ配信」を毎日平均6時間やりまくった、コロナ渦8ヶ月の日々【不定期連載vol.2】

前回記事はこちら。

takamichi-nariu.hatenablog.com

 

 

チャンネル登録者の大半は実際に交流した人々である。ゆえに、オンライン上でコミュニケーションの輪を作れば、今までと同じように直接Youtubeの宣伝が出来るかもしれないと考えた。そこで始めたのがライブ配信アプリ「X」だった。

様々な種類のライブ配信アプリがあるが、「X」には一般人が多いのが特徴である。登録も簡単で、誰でもすぐに配信者になることができるらしい。芸能人も参戦しているライブ配信アプリほどハードルは高くなさそうである。

長ったらしいアプリの概要が公式サイトにあったが、小難しいシステム説明はすべて後だ。まずはやってみよう、やりながらゆっくり覚えていけばいい。上手く宣伝出来たら万々歳じゃないか。緊急事態宣言で暇なのだ、時間はたっぷりある。

 

こうして私は意気揚々と「X」をインストールし、壮大な冒険へと繰り出した。

 

 

         ***

 

 

 酒を飲みながら恋愛相談に乗る。

これが私「恋愛心理学アルチューバー」の主な活動だった。

当時私は、酒が好きだという理由で「アルチューバー」というYouTubeネームを使っていた。アル中とユーチューバーをかけたネーミングである。そこに宣伝材料の恋愛心理学を付け足し、「恋愛心理学アルチューバー」としたのだった。

ふざけた名前だなと我ながら思っていたが、その奇怪さが功を奏したのか、わりとすぐに視聴者はやってきた。

 

 

「三年間彼氏が出来ないんですけど、どうすればいいですか?」

 

初めて相談をしてきたのは‘‘林檎さん‘‘という女性だった。とにかく出会いがない、という彼女。まあ確かに緊急事態宣言中だし、近日中に出会いを求めるのは難しいことである。だが、去年はまだコロナの恐怖にさらされていない。ゆえに、コロナ渦以前の動向について探ってみることにした。

 

「ちなみになんですけど。過去三年間の中で、合コンとかしました?」

「したことないです。」

「ご時世的に今は厳しいかもしれないけど、結構飲みに行くほうですか?」

「一か月に一度、家族で外食に行くか行かないかです。」

「職場は男性多いですか?」

「職場恋愛はしない主義です。」

 

ああ・・・心の中で空を仰いだ。これじゃ出会えないよ、無理だよ。っていうか三年前にいた彼氏とはどうやって出会ったんだろう。不思議。

 

 「多くの人と出会った方が、良い相手が見つかる確率が増えますよね?」

「はい。」

「現在の林檎さんの出会いは、専ら受動的なものが多いかと思います。ですが、今の状態では求めている出会いが見つからないわけじゃないですか。そこに能動的出会いが加わればもっと多くの人と会えますよね。出会いの絶対数を増やして、まずは確率を上げることから始めましょう。」

と、行動しなきゃ現状は変わらないよ!とそれとなーく促す。

 

「能動的出会いを増やす…か。わかりました。ありがとうございました。」

 

そうコメントを残すと、林檎さんはあっさりいなくなった。初めての恋愛相談は驚くほど呆気なく終わった。YouTubeを宣伝する間もなく、林檎さんのアイコンは画面から消えてしまった。え、こんなもんなの?なんだか薄情すぎやしないかい。聞くだけ聞いていなくなっちゃうのかよ。もう少し滞在していきなよ…。心の中に小さなとげが刺さったままだったが、まだまだ冒険は始まったばかり。いろんな人がいるのだ、しょうがない。切り替えよう。毎日配信を続けて宣伝すればちゃんと登録者増えるはず。さぁ、頑張ろう。

ちょっとした悔しさを抱えながら、その日は計4時間ほど配信した。

 

 

つづく

 

    ライブ配信アプリ「X」のシステム

 

  • コイン:1分30秒ごとにコメントを打ち込み、7分間その人の配信に滞在することで獲得できる。一回につき、ランダムで3~10コイン。1つの配信枠で1日2回獲得チャンスがある。1コイン=1円で購入することも可能。
  • アイテム:コインを消費し、視聴者が配信者にプレゼントするもの。投げ銭。1コイン~5555コイン相当のものがあり、画面にエフェクトを生じさせる。配信者のランクメーターにも大きく影響する。
  • ランク:E帯~S帯までのランクがあり、上級配信者はB帯~S帯にいる。人気度の指標になるため、多くの配信者が上のランクを目指している。配信しないと徐々にランクが下がってしまう。
  • ファミリー:配信者と視聴者のコミュニティチャット。また、配信者のファミリーに入ると、視聴中に「タグ」をつけることができる。「タグ」検索をすることによって新しい配信者との出会いを得る視聴者が多いので、新規獲得非常に重要である。(私の場合は、‘‘恋愛相談受付中‘‘というタグが多かった)

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女子高生がちょっと大人びて見える、土日祝限定「レディーマジック」。

「祝日はむしろ働いてます!」

サービス業の方々は口をそろえて言う。

私自身、塾講師と飲食店をダブルワークしているのだが、祝日はがっつり働いている。

まあそもそもフリーターなので、祝日だろうが土日だろうが特に意識することはない。平日より忙しいかな、という認識でちょっと多めの仕事を請け負うのみである。

唯一弊害があるとすれば、電車のダイヤが‘‘いつも通り‘‘ではないこと。20分かけてご飯を食べ、30分で洗顔やヘアセット等を終え、7分歩いて駅に着く。この自分のルーティーンが大幅に崩れてしまうのが正直不快である。普段の通りに過ごしてしまうと、土日祝は電車に乗れなくなるので10分早起きしなければならない。たかが10分、されど10分である。微々たるものだが、この差は大きい。よーいドンで猛ダッシュ、丹念込めて作ったヘアスタイルを、風にぐちゃぐちゃにされたくはない。

 

だが良い面もある。

前述した通り、平日は私もルーティーンに沿って動いているが、おそらくみなもそうだろう。そして祝日は、多くの人が過ごす平常を破壊する。

結果、ルーティーンに新しい刺激をもたらし、普段とは違う新鮮な光景を映し出す。学校終わりに来る生徒も、見慣れない私服姿で塾にやってくる。仕事終わりにやってくる常連客も、スーツの殻を破ってカジュアルスタイルで昼飲みをしに来る。

「みんなホントはこんな感じなのね。」

学校や職場に縛られて生きている人々が、あるがままの自分を表現していく。紋章が刺繍された制服を着ていないだけでこんなに違うのかと生徒を見ていていつも思う。女子高生なんか、私服に着替えただけでちょっと大人びた雰囲気を醸し出せちゃうのだからすごい。あ、どきどきはしないですよ笑

 

今週のお題「祝日なのに……」】。

土日と被って、みんなの違う顔を見れる機会が一日減ってしまうのが寂しい、というのが個人的感想である。サービス業は祝日とか関係ないですもの、むしろいつも以上にバリバリやんないといけないんですもの、こうやって違う楽しみ見つけていかないとしんどいっス。

そんなこんなでそろそろ居酒屋バイトの時間なので支度始めます。今日はどんな顔が見れるかなー、ああたのしみだなー。(忙しくないとイイナ・・・)

 

おしまい




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