エヴァンゲリオン未鑑賞の母が、序・破・Qのダイジェストを見ただけなのに一瞬で物語を理解した件について。

4月29日にNHK BS1にて放送された「さようなら全てのエヴァンゲリオン庵野秀明の1214日~」を母と共に視聴した。

 

エヴァンゲリオンの映像作品はすべて鑑賞済みだが、未だにはっきりと理解出来ていない箇所がある。とりあえず新劇場版は2回ずつ見た。シン・エヴァも同様である。最終回ということもあって今作は割と分かりやすいと思ったが、やはり1回映画館に足を運んだだけでは足りない。ああ、本当に終わったんだなという実感を得たのは2回目鑑賞時であった。

 

実は庵野さんに何度かお会いしたことがある。

かつてイタリアンレストランで働いていたのだが、その際何度か利用して頂いた。番組でも語られていたが、庵野さんはめちゃくちゃ偏食家だ。ゆえに、こちらも【庵野秀明特別メニュー】を考えなくてはならない。「何を食べないか」はデータに残してあるけれど、「何が食べたいか」は本人の気分もあるのでこちらもよくわからない。ひと口食べただけで、スタッフの方にあげてしまうなんてこともよくあった。(その様子を見て頭を抱える料理長がちょっと可哀想だった)

でも庵野さんに我儘男という印象は全くない。むしろシャイで紳士的だったイメージがある。ごちそうさまでしたと何度か頭を下げて、そそくさと店を後にする姿が大きな体に似合わなくて可愛い♡と思ったのはここだけの話にしておこう。

 

「今日は8時から庵野さん見るからね!」

庵野さんに勝手に親近感を覚えていた私は、両親に向かって高らかに宣言した。テレビは譲らないぞという強い意志を示し、エヴァ未鑑賞2人にハイハイと呆れられながらテレビの保有権を獲得。そして普段の1.3倍のスピードで夕食を平らげ、放送開始10分前にはリビングのソファーへ座りスタンバイ。鑑賞準備は完璧である。(以下シンエヴァのネタバレあり)

 

だがしかし、ひとつ懸念があった。あれはなに? これはなに? このひとだれ? 常にくっちゃべっている母の存在である。家で映画やドラマを見ていても、スポーツ中継を見ていてもとにかくひたすら質問してくる。息子として言うならば、「うざい」の一言に尽きる。うるさいなぁ、集中してるんだから黙っててよ!もしくはどっか行って!サッカー日本代表戦のときに外飲みへと追いやった記憶が頭をよぎった。

あれはなに?これはなに?と質問攻めにあったら、「アヤナミレイ(仮称)か!」と突っ込んでみたい。まあ、エヴァ未鑑賞の母からしたら意味不明だろうけど。

 

そんなこんなで8時になり番組が始まったのであるが、有難くもその懸念は杞憂に終わることになる。いつもなら聞こえてくる母の声がどういうわけか全く聞こえないのだ。私に気を遣ってお口にチャックなのか、スマホをいじっているのか、はたまた具合でも悪いのか。

そーっと振り返って母を見てみると、なんとめちゃめちゃ集中してテレビを見つめているのである。庵野さんが「僕を撮らなくていいから」とカメラに向かって言っている。庵野さんが居酒屋でビールを飲んでいる。画面に映るそれらの光景をただただじっと見ているのである。

 

「おもしろい?」

思わず私の方から母に話しかけてしまった。

「うん。見入っちゃう。」

私の顔を一瞥することなく答える。

エヴァンゲリオンを一度も見たこともない母が庵野さんのドキュメンタリーに見入っている。アニメにほとんど関心がなく「最近流行りの、鬼のナントカ」と言っているような人が真剣に見ているのである。アニメのシーンも食い入るように見つめている。私からすれば、かなり異様な光景だ。

 

庵野さんすごい!エヴァンゲリオン見てみたい!」

前編が終わり、母が言った。こんな言葉が飛び出すなど大地が真っ赤に染まらない限り起こらないと思っていた。

確かにエヴァは魅力的な作品だ。なんとなくハマっていって、徐々にコアなファンになっていく人が多い。というか私がそれだ。庵野秀明という人物に心を掴まれてから見始めた、そのような人はなかなか少ないのではないか。これはカリスマゆえになせる業なのか。庵野さん恐るべしである。

 

「え、まぁ別にアマゾンプライムで見て頂いていいんですけど・・・話、結構難しいよ?」

「あらすじ、Youtubeにないの?」

「たぶんあるんじゃない。」

「見たい。」

 

序・破・Qをそれぞれ5分ほどにまとめた公式ダイジェスト動画があったため、番組全編が終わってから一緒に見た。指を顎の下にやりながら首を傾げ、神妙そうな顔を浮かべている。

使徒ってなに?あのピラミッドなに?きっと様々な疑問が生まれていることだろう。大丈夫、そんなの15分じゃ理解できないから。「なんかすごそう!」でいいのさ、お母様よ。

 

「なるほど!わかった!」

 

いやいや、ウソでしょ。なんでやねん。

 

スターウォーズだね!エヴァは。だって碇君、お父さんのこと嫌いなんでしょ?それで喧嘩するんでしょ?それに乗り物がたくさん出てくるし。そっくりそっくり!。」

したり顔で説明してくる。

 

まぁたしかに・・・。

ジェダイの騎士ルークはダース・ベイダーを憎んでいる。しかし、憎み切ったままで物語は終わらず、最終的にダークサイドから連れ戻し父の魂を救済する。そのストーリーのみを千切ってみると大まかなところは同じだ。一瞬で要約してしまったのでついつい感心してしまった。

 

 

いやいやいや!

アスカや綾波ミサトさんなどの細かい人物描写は端折っちゃいけないよ!全てが大事なのだよ!はっ…もしかして公式さん…初見民がスターウォーズっぽく受け取ってくれるようにダイジェスト作ったの!?だとしたならば、完全に思惑通りです!うちの母、興味持ってます!ああ、フォースと共にあらんことを!まあ、母は綾波レイア姫ポジションだと思ってるけど!笑

 

・・・というか母よ、シンエヴァ見てないのによくわかったな大雑把な展開が。

 

ちなみに茶色い髪の女の子と紫色の髪の女性の区別がつかなかったらしい。物語は完全理解しなくていいから、登場人物はきちんと把握してほしいものである。1ファンとして切に願うばかりだ。いつか改めてちゃーんと見てほしい。(結局、地上波で再びやらない限り見ないんだろうけど)

 

【終劇】

 


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