「ライブ配信」を毎日平均6時間やりまくった、コロナ渦8か月の日々をギリギリまで激白してみた。【連載記事vol.6】

 前回の【vol.5】はこちら。

takamichi-nariu.hatenablog.com

 

「実は、スピリチュアルとかオカルト系も好きで!京都に住んでいたころは、神社巡りしまくってました!」

 

酒の勢いも相まって、気が付けば私は興奮気味にまくしたてていた。

 

「深夜の神社に行くのが特に好きで。昼間と空気が全く変わるじゃないですか。ちょっとおどろおどろしい雰囲気もありつつ、神聖さも感じつつみたいな。あれが癖になっちゃうんですよね。」

「え!何やってんの!?変なの憑いてくるからやめな!」

「え、まじすか!?」

「夜は神様がいなくなる時間だから、あまりいい場所じゃなくなるのよ。低級な動物霊とかがやってくるから絶対に行かないほうがいい。」

「うわあ、勉強になります!」

「マジで気を付けな。」

 

Yuiさんは九州に住んでいる30代前半の女性占い師だった。プロフィールには【霊視・スピリチュアル・占い】と記載されていた。まさかそのようなジャンルの方が来てくれるなんて思ってももみなかったから、ものすごくテンションが上がったのを覚えている。姉後肌ムンムンで様々なアドバイスをしてくれる彼女に、私はかなり懐いていた。困っていること、悩んでいること、多くの相談をした。「X」の最重要要素である集客を手助けしてくれたのも彼女であった。

 

「せっかくイケメンなのに、全然人来ないねー。」

「お世辞でも嬉しいです。ま、集客に苦戦はしてますが・・・笑。」

「相談に乗ったら、ちゃんとアイテム貰ってる?」

「うーん…。正直、アイテム投げてって言いづらくて。チャンネル登録者増やすために始めたから、あんまり興味が無いっていうか・・・。」

「はあ、しょうがないなー!じゃあとりあえず私が一回投げてあげるわ。」

 

そう言うとYuiさんはすぐに100円相当のアイテムを放った。虹色に光る無数のシャボン玉が画面を下から上へと通り過ぎてゆく。過疎化にあえぐ殺風景な私の配信は、一瞬の煌めきを見せた。

突然の投げ銭に驚き、慌てて感謝の気持ちを述べる。だが、その言葉は無視され、代わりにアイテム効果の解説を述べた長文コメントが返ってきた。

 

「コメント数やアイテム数によって応援ポイントっていうのが上がっていくの。言い換えれば、これは盛り上がり度ね。盛り上がり度が高いほど、上位おすすめライバーに表示されやすくなって、初見リスナーさんが来やすくなるのよ。そして、それにダントツで影響を与えるのがアイテム。だから、基本的にはアイテムを貰わないと人はやってこないの。」

 

「乾杯アイテム」を貰いまくった後に、どういうわけか新規リスナーがわんさかやってきた、たかちゃんの異様な配信光景を思い出してハッとした。(連載vol.5参照)

100円相当のアイテムが次々と飛んだおかげで急激に応援ポイントが上がり、彼女は上位におすすめ表示された。そしてそれを見たリスナーたちは、「お、菜々緒似の綺麗なお姉ちゃんじゃん。少し覗いてみようかな。」となり、続々と入室し始めたということだ。

なるほど、謎が解けた。集客のポイントはここにあったわけだ。

 

「どうも!こんにちはー!」

もうご新規さんがやってきた。FUMIさんという女性だ。

「やったね、新しいリスナーさん来たじゃん!」

「ありがとうございます!Yuiさんのおかげです!」

「じゃあ、あたしは帰るねー。今日も頑張ってー!」

そう言うと、Yuiさんは颯爽と配信から出ていった。なんてありがたい人なんだろう。彼女もライバーとして活動しているらしいので今度お礼をしに行こう。無課金だから、投げれるのも少額アイテムで申し訳ないのだけれど。

 

「FUMIさん、初めまして。恋愛心理学アルチューバーの成生です。もし、恋愛に関するお悩みありましたら、どうぞご相談していってください。」

 さあ、せっかく頂いた機会だ。初見リスナーさんに全力で対応しよう。普段より大きい金額のアイテムを得たおかげで、その日はやる気に満ちあふれた配信が出来たと思う。

 

 

                            ***

 

 

大きいアイテムを投げてもらう快感は凄まじく、小さいころにお小遣いをもらった時のような喜びを私に与えてくれた。1円や5円、時折10円ほどのものはちょこちょこ貰っていたが、正直それでは心は満たされなかった。自分と同じような無課金リスナーが多かったからこればかりは仕方ないのだが、一度味わってしまうとまた求めたくなるのが哀しき人の性である。Yuiさんが配信に来てくれるたびに、100円以上のアイテムを期待してしまう自分がいた。実際、彼女は誰よりもアイテムを投げてくれた。私は次第に彼女の舎弟のようなキャラクターを演じるようになり、言うことを何でも聞き入れるようになった。

 

scene1

パワーストーンのブレスレット、ちゃんと浄化してる?」

「水晶の上に乗っけて保管してます。」

「見せて。」

私は手のひらにちょこんと収まるほどの小さなクラスター水晶を画面に映した。

「それじゃ小さすぎて効果薄いよ!いい?ちゃんと月光浴させなさい!新月と満月のときに月明かりに照らしてね!」

 

 

scene2

プロフィール画像、変えたほうがいいよ。」

「え、割と写りいいのつかってるんですけど・・・。」

「インテリ臭がしないの。そうだ、メガネかけて撮り直そ!」

別にインテリ目指してるわけじゃないんだけどな、という言葉は飲み込んだ。

「心理学でしょ、メンタリストDaiGoみたいにインテリ感出したほうがいいから!今のままじゃよくないよ!すぐ変えよう!」

 

 

仕事もなく飲み会もなく、ただ家にこもりきりの自粛生活を送る私にとって、Yuiさんの言葉は常に新鮮だった。説教じみたアドバイスはきっと、霊視などによるスピリチュアル的なものなのだろう。私はYuiさんに思い切り傾倒していた。恋愛相談に乗ったあとの疲れや、緊急事態宣言下の憂鬱、彼女はそれらをすべて吹き飛ばしてくれる。今から思えば、恋に似た感情を若干抱いていたのかもしれない。配信終了後には毎日のようにTwitterのDMでやり取りをした。ハイハイ、と軽くあしらわれることも多かったけれど、なんだかんだで毎回配信も来てくれるし、それなりに好いてくれていると自覚していた。

 

 

そんな彼女があんなにも簡単にいなくなってしまうなんて、その時は露ほども思っていなかった。

 

つづく


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