【コロナ渦で失業したので、「ライブ配信」を毎日平均6時間やりまくってみた8か月のこと】連載vol.5

 前回の【vol.4】はこちら。

 

全然配信に人が来ねぇ。

それが1番の悩みだった。

人が集まらなければ新規リスナーの恋愛相談もなく、Youtubeの宣伝も出来ない。私は発信者だから、当然のごとく自己顕示欲も満たされたい。それがスムーズにいかないことに対するフラストレーションも感じていた。

他のライバーたちはいったいどのようにリスナーを獲得しているのか。もちろん、長く続ければ続けるほどリスナーは増えていくのであう。だが、私と同じ時期に始めて、すでにそこそこの人気を得ている方々もいる。

彼らはどんなコンテンツを武器にリスナーとコミュニケーションを深め、人を集めているのだろうか。勉強と研究のため、配信時間の合間にリスナーとして、他の部屋を行脚してみることにした。

ヒントはきっと転がっているはず。

 

 

           ***

 

 

たかちゃんは、黒髪ロングヘアーがよく似合う、菜々緒似の綺麗なお姉さんだった。

「飲みながら配信してます☆」とプロフィールに書いてあったので、同じような配信スタイルかもしれないと思い、入室してみた次第である。

 

「どうもおー。たかちゃんでーす!!よろしくおねがいしまーす!」

 

入るやいなや、陽気な挨拶で迎えてくれた。酔っているのだろうか、なんだかご機嫌な様子だ。若干呂律も回っていない。机の上には宝焼酎の紙パックとお茶のペットボトル、そしてぎっしり氷が詰まったグラスが置かれている。

「初めまして!成生と申します!「X」はまだ始めたばかりで、あまりよく分かっていません・・・。新参者ですが宜しくお願いします。」

「成生さん、こちらこそよろしくですー!あたしもまだ始めて1週間くらいなんで、一緒に頑張りましょー。テキトーにお酒ガンガン飲んでるだけですけどねー。」

けらけら笑いながら、たかちゃんはグラスに手を伸ばす。

 

10人ほどのリスナーがそこにはいた。その時のたかちゃんのフォロワーは100人ほどだったので、初見がいなかった場合、10分の1が来ていることになる。これはすごい出席率だ。1週間でこの数字なら5月にはめちゃめちゃ増えているのだろう。

 

「たかちゃん、飲みすぎw」

「何時から飲んでるのー?」

「今日も可愛いね!」

 

様々なコメントが画面に次々と表示されていく。それらをひとつひとつ読み上げながら、返答をしていくたかちゃん。彼女とお喋りしたいからか、みんなじゃんじゃんコメントを投稿する。しかし、ほろ酔い状態のふわふわした口調は、酒が進みさらにふわふわ。コメント消化スピードはだんだん遅くなっていく。案の定、コメント欄が渋滞してきた。この様子だと私のコメントを認知してもらえるのはまだまだ先になるだろう。まぁ、時間はあるのだ。酔っぱらい美女を拝みながら、じっくり待とう。

 

そんな時だった。

 

「よーし今日も飲んじゃうぞー!明日は休みだー!みんなで乾杯したーい!」

突如たかちゃんはコメントを読み上げるのをやめ、甘えた笑顔を我々に振り撒いてきた。ああ、綺麗さと可愛さが程よく融合してるなぁ・・・なんて間抜けに見とれていると、いきなり、画面いっぱいに「かんぱ~い」のアイテムエフェクトが表示され、たかちゃんの胸元が華やかに彩られたのだった。100円ほどのアイテムだからか、いつも私が貰っている1円や10円相当のものよりも派手な演出である。

わああああ!っと嬉しそうに手を叩いたたかちゃんは、「Aさんありがとうー!飲みまーす!せーの、グイ、グイ、グイ・・・」と、セルフでコールをし始め、机の上にあった緑茶割りを一気に飲み干した。口元をティッシュでぬぐい、満足げな表情を浮かべながら「ああん、まだまだ飲んじゃうよー」とさらにリスナーを煽っていく。再びまた乾杯の音頭が始まる。きらびやかなエフェクトが止まらない。

おお、なんだかこのお姉さんすごいぞ。部屋で1人、スマホに向かって一気飲みを敢行するというのは、よくよく考えてみたら妙な行為である。圧倒的なパフォーマンスはもちろんだが、それを平気でやってのける度胸にも感銘を受けた。アイテムをあおり、投げ銭をしっかり頂戴していく。その手口の巧妙さにも脱帽せざるを得なかった。

 

気が付けば10人ほどだったリスナーの数は、1時間で15人ほどに膨れ上がっていた。途中で抜けた人も数名いたため、トータルで30人ほど来ていたと思う。しかも、約半数が新規のリスナーだった。6時間配信して4、5人しかやってこない私の配信とは雲泥の差である。

そりゃあ美女がハイテンションでお酒飲んでたら人気になるよね、というのが率直な感想だった。勉強のためにこの配信に訪れていた私も、気が付けば彼女の虜になっていたのだから、彼女の作戦は相当なものだ。美女と酒が飲めない自粛期間ゆえ、ライブ配信でそういった気分を味わう。間違いない、需要はある。

 

ただ、そこでひとつの疑問が生まれた。

それは、数多のライブ配信者がいる中で、どうやってそのような美女を見つけ出すのかということである。

以前、【vol.2】の記事で『X』のシステムについて触れ、その項目にファミリーというコミュニティチャットの概要を記載した。ファミリーに加入したリスナーは、視聴中に「タグ」をつけることが可能になる。積極的に様々なタグを付けていくことは、配信者を応援することにつながる。タグは新規リスナー獲得に大きな役目を果たすため、重要度が高い。リスナーは、自分が興味のあるキーワードでタグ検索をして、新たな推しとなる配信者を探すことが多いからだ。

たかちゃんの場合は、

「#お酒大好き黒髪乙女」

「#菜々緒似美女と乾杯しよ」

「#美女、絶賛酔っ払い中」

「#ストロングゼロはノンアルですw」

「#肝臓は成長する」

など、お酒に関するタグがほとんどを占めていた。実際私も「お酒」で検索して彼女の存在を知ったので、やはりこれは重要な機能なのだと思う。

 

だがそれだけでは、新規を獲得し続け、根強いファンを多く持つ人気ライバーになることはできないはずだ。

私も、ユサちゃんや千草ちゃんにタグをつけてもらっていたのだが、たかちゃんほどの新規は獲得できていなかった。

「#恋愛相談募集中!」

「#恋に悩める人を救います!」

「#お酒飲みながら恋バナ聞くよ」

等、彼女たちは様々なタグをつけてくれた。だが、どういう訳か思ったほどの効果は期待できなかった。単純に恋愛相談に需要がないのかとも思ったが、来るときは来るのでそういうことではないのだろう。

 

なぜあんなにもたかちゃんの配信に新規リスナーがやってきたのか・・・。

その謎は、とある人物の登場によりすぐに明かされる。まさに彼女は青天の稲妻だった。いよいよ私は、「X」における集客で、最も肝心なポイントを身をもって知ることになるのである。

 

【vol.6】に続く。

 



f:id:takamichi-nariu:20210524184440j:image