「ライブ配信」を毎日平均6時間やりまくった、コロナ渦8ヶ月の日々をギリギリまで激白してみた。【不定期連載vol.4】

 前回の【vol.3】はこちら

takamichi-nariu.hatenablog.com 

「大好きな彼と付き合いたい」

「大好きなあの子と付き合いたい」
 
 
よくある相談である。というかそんなのばかりである。
相手がどんな人を求めているのか、何が好きなのか等をしっかりリサーチして、効果的なアプローチを仕掛けていくことが重要です。今やっていることが自己本位なアクションになっていないかどうか、まずは振り返ってみましょう。
と言ってしまいたいところだが、そんなものではチャンネル登録をしてくれないので、真摯にコメントを読んでいく。膨大な量の恋のあらすじに目を向けながら、最後にがっちりアドバイスをするというのが大抵の流れ。始めたころはリスナー数が少なかったため、相談に一人あたり20分ほどの時間を割くことが出来た。
そんななか、唯一、恋愛相談に40分を費やした女がいた。名前はリンカ。壮絶な8か月の日々の中で、一番長い相談時間を設けた女である。衝撃的な相談内容と高火力な
キャラクターは、今でも私の脳裏に血よりも赤く焼き付いている。
 
 
「私には、好きな人がいる。私は、彼と、付き合いたい。」
 
なんとなくこの1コメント目から妙な感じがした。多分この人はやばい人だ、本能的感覚によるものだろうか、瞬時にそう思った。これでもかと加工されたリンカの自撮りアイコンが毒々しく画面に映る。こちらを見つめる虚ろな目は見ているだけで呪われそうだった。だがしかし、チャンネル登録者数増加のためである。接客せねばなるまい。この日は常連リスナーのユサちゃんも千草ちゃんもなぜか来ていなかった。リンカと完全マンツーマンである。
 
「そうなんですね。今の関係はどんな感じですか?」
丁寧に無難に対応をしていく。
「まず、彼は、私のことを、知らない。」
「うーん・・・。自分の存在を知ってもらうところからはじめましょう。会話しないと関係は始まりませんからね!彼と話すチャンスってありますか?」
「彼は、歌を作るのに忙しくて、私に会えない。SNSも、やってるかわからない。連絡が取れるのは、オフィシャルサイトの、メッセージフォームだけ。」
 
彼女の奇々怪々な発言に思考が追いつかなかった。オフィシャルサイト?メッセージフォーム?‘‘私に’’会えない?画面越しに数秒間固まってしまった。
これらの情報から察するに、相手はバンドマンなのだろう。ただのバンギャなら全く問題ないのだが、これはメンヘラが相乗された危険なタイプだ。信号はほぼ赤である。
 
「…えー、その彼は…バンドマンの方なんですか?」
一応、おそるおそる聞いてみる。
「そう。ジロー。」
「ジロー?」
「知らないの?」
「いや、ジローさんってたくさんいるから。」
はぁとうんざりしたため息が聞こえた気がした。
GLAYの、JIRO。覚えて。」 
 
思い切り面食らった。てっきり小規模なビジュアル系バンドのメンバーにガチ恋しちゃってるだけかと思っていたのだが、それを大きく越えてきた。超大御所ベーシストの名前をまさかこんな形で聞くとは。これは冷やかしなのかネタなのかガチなのか。まあ雰囲気からして、確実に後者なんだろう。いや、冷やかしなら冷やかしって言ってくれていいんだよ。わたし、今なら怒らないから。というか、そう言ってほしいよ、もはや。
 
「…正直、ちょっと難しいと思いますよ。JIROさん、奥様もいらっしやいますし。」
もはや、この返し方が正しいのか間違ってるのか分からない。やんわりと焼け石に水のような正論(?)をぶつけてみたが、やはりリンカも簡単には引いてくれない。
 
「でも、私は、彼のことが、好き。どうしても、付き合いたい。」
 
一歩間違えれば犯罪の領域に踏み込みそうである。ちょっともう、この人恐い。
 
「…まず相手に自分の存在を知ってもらうところから始めましょう。ファンレターを送るなど、様々なアプローチをしてみては?」
しょうがないので多少付き合っていく。
 
「彼は、忙しい。読んでくれるか、わからない。」
「やってみないと分かりませんよ。」
「彼の、忙しさを、あなたは、知らない。」
「リンカさんはどれだけ忙しいか知ってるんですか?」
「ツアー、レコーディング、忙しいと思う。私が、彼を、癒やしてあげたい。」
 
句読点の多さ及び、謎の上から目線にイライラし始めていた。恐怖を通り越すと、次は苛立ちに変わる。さっさとこの配信から出て行ってくれと願うばかりだった。しかしその気持ちをいたぶるかのように、リンカはJIROに対する激しい愛情を語りだしていく。
その後も、同じようなやりとりが延々と繰り返すが、最後の方は私も匙を投げて「いや、もうJIROさんは無理だから」と乱雑にはね返すようになっていた。「あなたに、私の、愛は、わからないでしょう。」と言われたがそんなの当たり前である。むしろ分かりたくもない。
出ていく間際、リンカは1円相当のアイテムを投げていった。
「これは、あなたに、あげるものじゃない。JIROに、あげるの。」
意味不明の投げ銭である。一応40分も相談に乗ったんだし、もうちょっと投げてくれてもいいんじゃないかとは思ったが、これ以上不毛なやりとりを続けて無駄な疲弊したくはない。もはやチャンネル登録も結構である。
ちなみに、40分で1円貰っても、俺もJIROも嬉しくないぞ。
 
                    ✳✳✳
 
なんでこんなにしんどいんだろう。配信終了の文字を押したあと、そのまま床に座り込んでしまうことが増えた。グラスに残った少量の焼酎を飲む気力もなく、溢れてきそうな涙をこらえるばかりだった。
6時間以上の配信。来てくれるリスナーは大体4,5人。新規は1日あたり1人ほど。投げ銭もほとんどない。チャンネル登録者数も伸びない。この疲労感に相当する見返りを感じられず、始めて間もないながら、「やめたい」と何度も思った。でも、緊急事態宣言により仕事もなくなり、Youtube活動もうまくいっていない最中。
自分に出来ることはライブ配信だけだった。
いつか人がたくさん来てくれると信じて、毎日毎日やり続けるしかなかった。
 
つづく
 

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